管理組合のお客様へ
マンションは、全区分所有者で管理組合が形成され、年毎に管理組合運営を担う役員が選出され、総会を開催し、区分所有者の同意を得ながら、マンション共用部分の維持保全及び管理組合運営が行われています。
建物の維持保全の中で最も重要になってきますのが、大規模修繕工事であります。
これは計画修繕とも呼ばれ12~15年の周期で工事が実施され、建物の資産価値・生活環境を向上させます。
大規模修繕工事は、工事計画に相応の時間を要しますし、多額の費用が必要となります。
工事の費用は各世帯から毎月徴収している修繕積立金から支出されますので、過不足なく、そして居住者のニーズに沿った工事を適正価格で実施することが管理組合役員に求められています。
世帯数・工事内容により異なりますが、大規模修繕工事の計画・準備期間としては一般的に1~2年 工事期間は3か月から規模が大きいと1年程度となっております。
そこで、管理組合としましては、まずは工事実施時期を固め、そこにむかっていくつかのステップを踏んで1つ1つ実施していくこととなります。
以下には一般的な工事着手までの流れですので参考にしてください。
最初に行ってほしいのが、いつ工事を実施するかを決めることです。工事時期は計画の進捗等により若干のずれは発生しますが、 「〇〇年の〇月に工事にとりかかろう」 「〇〇年の〇月には工事を終わらせてきれいな状態にしよう」 と大まかな工事時期を理事会等で決定してください。 |
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POINT | ①工事の時期は長期修繕計画に設定されております。 工事には多額の支出が発生しますので、積立金の推移も工事時期決定には大きな要素となります。 ②工事は日常生活の中で行われます(皆様がお住まいの中) したがって、多くのマンションでは日常生活への影響を考慮し、大規模修繕工事は、春工事(1初旬から2月着工) 秋工事(8月下旬から9月着工)という2つの時期のどちらかで計画されます。 このようにすることで、「年末年始休暇前に工事が完了していてきれいな状態で新年を迎えられる」「真夏にうっとおしい足場が無い状態となっている」 というメリットがあります。 その反面多くのマンションで工事が計画されることから、作業員や資材の確保が厳しくなることもあります。 日常生活への影響 と スムーズな工事進捗のどちらを優先するかの選択をすることとなります。 ※規模の大きなマンションでは年末年始及び夏季を跨った工事期間となります ※可能であれば、工事時期を決定したその年の定期総会にて、大規模修繕工事を〇〇年に計画していく旨を報告という形で発表しておいた方がよいでしょう。 |
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大規模修繕工事は多くの検討事項があり、また検討に要する期間も長くなります。 理事会は管理組合運営等の検討事項も多くあることから、マンションによっては大規模修繕工事等の計画を担当する諮問機関を設置し、そこに計画を一任し、理事会は諮問機関の決定事項を承認という形式をとる組合もあります。 (規模が大きなマンションですとこの形の方が多いです)諮問機関の名称は一般的に「修繕委員会」「大規模修繕委員会」「大規模ワーキング」等の名称とし、区分所有者に理事会として広報し募集を行います。 (以下、諮問機関は修繕委員会と称します) 修繕委員に選ばれた人達の中で、修繕委員長(場合によっては副委員長も)を選任し、委員長のリードで工事計画が進められます。 以下は修繕委員会を設置した場合を仮定しています。修繕委員会を設置しない場合は、委員会を理事会に読み替えてください。 |
修繕委員会にて、工事の方式の決定を行います。
工事方式は大きく分けて、 ①責任施工方式(発注者である管理組合と施工会社のみで工事を行う) ②設計監理方式(発注者の業務委託者として設計事務所・管理会社等工事に精通した専門家に工事計画の補助を委託し工事計画を進め、工事の際は施工会社の品質等のチェック等工事監理を委託する方式) の2つの方式となります。 ※どちらの方式にもメリット・デメリットがあります。詳細は当社にお問い合わせください。 |
上述しましたとおり、最初に目標とする工事時期の決定はしておりますが、建物の状態が良ければ無理に工事を行う必要はありません。 そこで建物の現状把握及び計画の基礎資料を目的に「建物劣化診断」を実施します。 建物診断で得られた結果を基に、工事時期・工事範囲・工事仕様を決定していきます。 ※建物診断結果は委員会のみで共有するのではなく、理事会へ報告するとともに、可能であれば報告会を開催し、広く区分所有者に周知しておいた方が総会決議等スムーズにいきます。 |
建物診断結果に基づき、工事内容の詳細を決定していきます。 この工事内容の決定はとても重要で、限られた修繕積立金で最大限の効果を得ることが目的ですので、専門家の意見、劣化状態、費用対効果、次回大規模修繕工事の影響等様々な角度で決定します。 また、決定した工事内容で、工事仕様書・見積要項書(複数社から見積徴収する際に必要な条件等記載した資料)・設計予算書を依頼し、工事代金支払い時期の修繕積立金残高と対比しながら、工事可能と判断された場合は、工事内容の確定となります。 ※予算書作成を依頼する相手先ですが、設計監理方式の場合はその委託先。責任施工方式の場合は前回大規模修繕工事を施工した施工会社もしくはマンションの管理会社に委託することが望ましいです。 ※予算書において、積立金を超過した場合は、工事範囲・仕様の見直し、または借入金の試算、又は工事時期の変更等を計画します。 ※工事予備費:大規模修繕工事は外部足場を設置しないと数量や状態が確認できないものも含まれているため、工事予備費は必要となります。一般的には工事金額の5~10%くらいを予備費として見込みますが、工事内容・工事規模・修繕積立金の残金等により変化をします。 |
工事設計図書が整ったら、施工会社の選定にかかります。 見積を依頼する会社は複数社取得が必要となり、多すぎても選定に労力がかかり比較検討が困難になりますし、少なすぎると競争原理が低下します。 何社に見積依頼をするかは委員会で専門家の意見を聞きながら決定しますが、まずは見積を依頼する会社の募集をしなければなりません。 募集の方法は、 ①館内公募方式(マンションの掲示板に施工会社の募集の掲示をし、居住者に知り合いの会社を紹介してもらう) ②専門新聞に掲載(マンション管理新聞・建通新聞等業界紙に施工会社募集の広告を掲載) ③設計監理者推薦方式(過去の実績等を勘案し、設計監理者に複数施工会社を紹介してもらう) が多く用いられております。 また、上記①~③を併用することもあります。 ※募集においては、工事規模・工事内容を勘案した一定の施工会社募集条件を付保することが望ましいです。(資本金・施工実績・売上等) |
工事の大きな成否を左右する施工会社の選定は、公平かつ多角的に行わなければなりません。 専門家のアドバイスはもらいますが、委員会自身で決定することが必須です。 施工会社の選定は、応募書類審査(1次審査)→見積依頼→見積徴収→見積内容審査(2次審査)→面談審査(3次診断)→施工会社内定とすることが多いです。 |
委員会は理事会に対し、決定業者・決定金額・決定理由を理事会に答申します。理事会で審議し施工会社の承認をします。理事会は承認した業者を総会の場にて、決定業者・決定金額・決定理由の他、予備費の額、工事着手時期を補足し総会の決議を取ります。 総会で承認された後は、工事請負契約締結・所轄官庁届出等を行います。 |
委員会は、設計監理者とともに、定期的に施工者と協議を行います。 協議頻度は、目安として1回/月以上となり、管理組合が検査を行う場合は 協議頻度は多くなります。 |
工事が完了し、施工者より工事の引き渡し後は、アフターメンテナンス期間となります。 工事内容によっても異なりますが、最長で竣工後15年となる場合もあります。(部位・仕様によってアフターメンテナンス期間・内容は変わります) 委員会は工事完了とともに、その責務が解除となることが多く、委員会は解散となるケースが多いです。 このアフターメンテナンス期間は、期間が長く、輪番制で管理組合が変わる管理組合においては、引継ぎのをしっかり行う必要があります。 |
以上が一般的な工事完了までの流れです。
多くのステップがあり、大変とおもわれた方も多いと思いますが、専門家や有識者にサポートを受けることで、労力の低減・成果拡大できます。
マンションという非常に重要な資産の価値向上、生活環境の向上に不可欠な工事でありますので、任期中は全体の利益のため頑張ってください。
当社は施工会社ですが、工事着手迄の計画補助は実施可能ですのでお気軽にお声をかけてください。